「韓国新政権誕生に立ち会う」

2022年7月5日

去る五月十日、ソウル市内国会議事堂前、汝矣島(ヨイド)広場にいた。
名誉総領事に就任して、初めての大統領就任式だ。
私を名誉総領事に指名したのは、康京和韓国外交部長官(当時)と茂木敏充外務大臣(当時)だった。
当時は韓国与党は「共に民主党」で日韓関係は戦後最悪と言われていた。私も名誉総領事就任を躊躇した程だ。その経緯については、以前述べた。

成田でPCR検査を受け、英文の3回接種証明を持参、更に福岡総領事館からVISAの発給を受けてのソウル入りだ。
日本からの特別招待者は少なく、日韓議連の先生方や民団中央本部の団長など極、限られた陣容だった。
(その理由としては、今回はアプリだとか、QRコードだとか、空港での検査の煩雑さなどであったと思う)

その中に私も入れて貰い、仁川空港到着以後、正にVIPの扱いだった。(こちらが面食らう位)

当日は快晴、風は吹いていたが、日差しは時間の経過と共に強くなっていった。
野外での就任式である。
議事堂前の汝矣島広場には五万人近い群集がひしめき、新大統領の登場を待つ。ひな壇には我々を含む各国の特別招待者が指定された席に座っている。
周辺のビルの屋上には、ライフルを構えた狙撃兵の姿があり、空中にはドローンが飛んでいる。幾重にも検問所があり、厳重警戒の極みだ。
更に新大統領に関わる場所には、屈強なSPが数多く配置されていた。
オペラの声楽家達が歌う「威風堂々」に中。尹大統領夫妻が壇上に上がる。その周りも大統領警固隊が取り囲む。

韓国の大統領とは、日本の天皇陛下の権威と内閣総理大臣の権力を兼ね備えた存在なのだ。

現在、新大統領を囲む国際情勢は複雑だ。
先ずは、北朝鮮という存在がある。その背後にある中国は巨大な国家であり同時に、韓国にとり重要な貿易相手国であり、様々な資材の一大供給元である。また、北朝鮮の隣には、現在ウクライナを攻撃中の、プーチンロシアがある。そして日韓関係だ。

国内では国会は野党(共に民主党)が多数を占め、新政権の政策に対して強い抵抗を取るだろう。いわゆるねじれ現象だ。
更には経営者と労組、都市と地方、ジェンダー、格差などの根深い対立構造が国内に存在する。

しかしながら、就任式後の政権の滑り出しは順調だ。

先ずは人事に関しては強行した。
新大統領は政治経験が無く、その手腕は未知数と言われていたが、しかし、そのブレーンには頼もしい知日派の顔ぶれが並ぶ。
そして予算配分に関しては、野党にも配慮し融和策を取った。
政治経験が無いという前評判を信じて低く見ていたが、正直なところ「やるな、、」という印象だ。

更に外交に関しては、前の文政権の様に曖昧ではなく、旗幟鮮明にした事がかえって国民に安心感を与えた。自由(就任式で35回使用)と民主主義という価値観を共有する西側のメンバーである事を明確にしたのだ。同時に北の脅迫に対しては敢然と立ち向かう、として三軍(陸海空)の信頼も勝ち得た。更に来る、韓国地方選挙で、人口の半数を抱える京畿道の知事選で勝利すれぼ、一気に国民の信頼は高まるであろう。

そうなると対日政策に於いても、今迄とは異なるアプローチを取れるはずだ。
我が国もこの機会を上手く、丁寧に育てる寛容な政策判断が求められる。

薩摩焼400年祭の時も、両国には政治課題は存在したが、金大中大統領と、小渕恵三総理の信頼関係が「21世紀日韓パートナーシップ宣言」という形で身を結んだ。この宣言の忠実な履行を双方に求めたいと思う。

僕は草の根の民間の交流を支える立場ではあるが、当然ながら政治的な友好関係は必須である。
尹新大統領と岸田総理の個人的な友情と信頼関係が生まれる事を強く願うものである。

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