「絶対」と「相対」

2021年12月28日

今年の12月23日は、上皇陛下の88歳のお誕生日である。
ハゼの研究で知られる上皇陛下は上皇の地位に就かれてからも、
2種類の新種のハゼを発見しておられる。
本当に頭が下がる思いである。

上皇陛下の米寿に心からの祝福を捧げたい。

十四代が赤坂御所で開かれた園遊会に招待された事がある。
大韓民国名誉総領事として旭日小綬章を頂いた事から、お声がけ頂いた。
不肖、私は護衛というか、お供というか、御家人として付き従うことを許された。

会場入り口で受付を済ますと、宮内庁職員が「沈先生、今日は陛下のお声掛けがあります。
これからご案内致します」と言われた。

驚いたのは十四代である。
何の前触れもなく、というか、そうゆう決まりになっているらしい。
前もって伝えると、緊張のあまり、一睡も出来ない人も居るだろう。(十四代はどうだろうか?)

庭園の一番奥に案内された。
宇宙飛行士の野口さん、漫画家の里中満智子さん、他10名くらいのメンバーに
両陛下、並びに皇太子殿下、秋篠宮ご夫妻など皇族の方々から直接御言葉を掛けられるのだ。

会場にはあちこちにテントが張られ、羊や鳥を焼いたり(宗教上問題がない)、スイーツを振る舞っている。

雨の中、宮内庁楽団が「君が代」の吹奏を始めた。皇族の方々が御所の敷地に入られた合図だ。

当日は雨が降る生憎の天気だったので、先触れの職員が
「陛下も傘をさしておられます。皆様も傘をさされて下さい」とアナウンス。
すると父の隣におられた漫画家の里中満智子先生が
「私、陛下の前で傘なんかさせないわ」呟いた。
すると、十四代も「ワシもだ」と。
結局、僕が2人の傘を後ろから差し掛ける事になった。

やがて陛下が来られ、侍従が「十四代沈壽官様です」と言うと
陛下が、「14年前の宮中晩餐会以来ですね」と直ぐに話された。驚いた。
すると続けて「金大中大統領の時でしたね」と言われた。
父は「は!」と答え、頭を下げる。

私は傘を両手で差しているため、頭をちょこんと下げた。
ただ、その穏やかな語り口と、和かな笑顔に最大の緊張と尊厳を感じた。

すると、美智子皇后様が「あんなに細かいお仕事、大変でしょう」と言わ
れた。
その暖かいお言葉を耳にした僕は陛下の尊厳、美智子様の優しさで、
いきなり泣き出してしまった。滂沱の涙が止まらない。
極度に張り詰めた気持ちに、温かい御湯を掛けてもらった様な。
この方々を御護りしなければならない!と役割でもないのに心に誓った。
もう、雨と涙でびしょ濡れである。

その時、感じたのは「この方々はもっとお金が欲しい、とか、
もっと偉くなりたい、とか、もっと美味いものを食べたいなぞと
いった感情はお持ちにならないだろう」という事だった。

誰とも競う事なく、ひたすら国民に寄り添い、国民の為に祈りを
捧げる最高の神官なのだ。これを「絶対の存在」と呼ぶのだろう。

陛下に比べたら合衆国大統領も、中国共産党の国家首席も、
皆んな権力闘争の勝利者に過ぎない。
つまり政敵を倒してきた「相対の存在」なのだ。

「相対」が「絶対」と向き合った時、「相対」はどうしたら良いの
か分からなくなるのだ。

この「絶対」の存在を維持する日本という国の面白さに、
ずぶ濡れになりながら、しみじみと感じ入ったものだ。

ページの先頭へ