直心直伝 「次世代リーダーとは?」

2012年9月10日

 今年も『日本の次世代リーダー養成塾』に講師として招かれた。日本経団連が中心になって毎年開催されている。私の授業も、もう何回目になるのだろうか。全国から集められた百六十名を超える日本の次世代のリーダー候補生である高校生達を相手に講義一時間、質疑応答三十分、クラスミーティング等、計三時間半の格闘が行われた。

 彼等が目指す日本のリーダーとは?そもそも次世代リーダーとは何なのか、私自身にも実は漠然としていて良くつかめない。

ただ、非常に前向きな高校生の一団である事は間違いない。「原発」、「いじめ」、「親子」、「国家」、等々、彼等の興味は尽きない。簡単に結論の出る話しではないだろうが、二週間の間、供に暮らし、議論を戦わした事は彼等に広い視野を与え、更に知的好奇心を刺激し彼等の今後の人生に何らかのプラスになると思う。

 それにしても人前で何かを語る事は実に大変な事なのだ。

 私は学者でなく、評論家でもなく、政治家でもない。例えば宇宙開発の話や海底の話、国際政治の話やスポーツ評論等到底出来ない・・・・。つまり、子供達に知識を与える事が出来ないのだ。私が伝えんとする事は、細かな陶芸の技術情報ではなく自らの体験しかない。これが大変だ。

初めて会う全国から選ばれた百六十名のスーパー高校生相手である。論も立つ、視点の置き所も鋭い、そんな彼等の前で自らの半生を語るなど、あたかも自分のズボンを下げてみせる様なものだ。

ただ大切な事は嘘を言わないという事だ。フィクションを折り込みながら効果的に話したつもりでもやはり嘘は全体を濁らせてしまい、「話し」としては面白くても、胡散臭く感じる人間は必ずいる。高校生相手とは言え、正直に素直に事実のみを話さなければならない。

 そんな中、私に寄せられる彼等の関心の多くはやはり日韓の問題である。報道によると韓国人は日本人を嫌っているのか?もし嫌われているのならもはや自分達は付き合いようがない、という訳である。

 隣国と付き合う事は、一見大変な事に思える。しかし、考えてみると国際交流には三つの交流がある。一つはG―Gといわれる政府対政府の交流である。これは様々な事で面子を掛けた交流である故にぶつかり合う。そして時折、断絶し、時として戦争まで至る事もある。

 次にC―C、つまり企業と企業の交流である。これ又、利が無いと知るや、たちまちその交流は絶えてしまうのだ。その点、P―Pと言われる人と人の交流は別である。面子や利害に振り回される事がない。互いを思いやる心だけで充分なのだ。この人と人との交流の細い糸を無数に繋いで行く事は大変重要な事だ。

 今、日韓は交流人口は約五百万人と言われる。双方を往来する割合もほぼ同じである。日本の人口の半分にも満たない韓国の方々が日本人と同数の交流人口を誇っているという事は韓国に於いて日本を訪問した人の割合は日本から韓国を訪問する割合の倍以上という事になる。

 私は日本の若い人にも、韓国の若い人にも同じように話す事は、まず訪れなさい、という事だ。旅行社がセットするツアーでもかまわない。自分だけの目と感性で直接見てくる事が重要である。マスコミから送られてくる断片的な情報だけで、相手像を組み立てていく事の危険さを言いたいのである。

政治的な軋轢の中にあっても日本と韓国、両国の友好親善に努力し続ける人々は相互に実に数多く存在する事を知って欲しい。

次世代のリーダーとならんとする若者達にはそういう広さと深さが求められるのだろう。

京セラ名誉会長の稲盛和夫氏の言葉を引用したい。

「中国の明代の著名な思想家である呂新吾は、その著書『呻吟語(しんぎんご)』のなかで、「深沈厚重なるは、これ第一等の資質」と述べています。つまり、リーダーとして一番重要な資質とは、常に深くものごとを考える、重厚な性格を持つ人格者であるべきだといっているのです。

さらに呂新吾は、その「呻吟語」のなかで、「聡明才弁なるは、これ第三等の資質」とも述べています。つまり、頭が良くて才能があり、弁舌が立つことは、第三番目の資質でしかないといっているのです。

 ところが、現在では、呂新吾がいう第三番目の資質しか持っていない人、つまり聡明才弁な人をリーダーに選ぶことが、洋の東西を問わず、広く行われています。確かに、そのような人材は仕事ができ、スタッフとしては大いに役立つことは間違いありません。しかし、彼らが立派なリーダーとしての人格を備えているかどうかは別問題だと思うのです。

 私は、現在世界の多くの社会が荒廃している根本原因は、このように第三等の資質しか持っていない人材をリーダーとして登用していることにあると思うのです。より良い社会を築いていくためには、呂新吾が述べるように、第一等の資質を待った人、つまり立派な人格者をリーダーにしていかなくてはならないのです」

実に示唆に富んだ卓見であろう。

日本の次世代リーダーを目指す若者達に贈る言葉に留まらず自分自身にもあてはめて考えるべき言葉であると感じた。

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