
池に鯉を入れた。
鯛ではない。
鯛は庭の池では飼えない。
池の水が減るので又も改修工事をした。
以前もやり、一旦は止まったのだが、又も減りだした。
業者は水は変わらずに減り続けてるのに拘らず、『私の考えられる全てをやりました』などと全力投球宣言をして、請求書を送ってきた不思議な男だった。
『ダメだよ。ちゃんと直してからじゃないと払えないよ』と言い、やっと原因がわかり、減水は止んだ。
その間、鯉を飼い続けられないので村の『愛鳥の池』に放流した。
広大な池の中で今、悠々と泳いでいる。
こいつらは、近所のつぶれた金魚屋のオッサンから六匹三千円でもらったものだ。
目白の田中邸の鯉は一匹数百万円するらしい。
朝、目覚めて池の鯉のうちの一匹が死んでたら、大概の人はそれだけで気絶するだろう。
それにしても、六匹で三千円とは…。まさに屑だ。
同じ鯉に生まれてこの差。
人間の格差社会なんてもんじゃない。
安かった彼らは頭ばかりデカくて、確かに格好悪かった。
おまけに口が下向きに付いてるから、水面に浮いた餌を食べるのに苦労してた。
しかし、今回は違う。
近所の金魚屋が閉店したため、鹿児島市内の店に行き、今度は七匹で二万円のものを選んで買った。
一匹一匹吟味して選んだつもり。
鯉の事は知らないが、体系といい、色といい、なかなか立派であると思う。
…ただし、小さい…。
将来に期待だ。
問題はこの新しい子鯉達は動かない。
池の底にじーっとしてる。
寒いからなのか?、或いは警戒心が強いのか分からない。
ただ、動かない鯉ほどつまらぬものは無いな…と知った。