虻(あぶ)

15代日記 | 2008年8月24日

 虻(あぶ)と云う虫をご存知か…?
 目玉が艶消しの緑色、身体は茶色に透明な羽で人を刺す。
 形状は戦闘機ほどは格好良くはないが、練習機ぐらいの格好良さはある。
 清潔感は無い。蜂の様なホバリングも無理だろう。
 血を吸うのだろうか…?良く分からないが、刺された跡が腫れて痛がゆい。
 夏に学校で写生に行ったとき、牛を描いてたら、虻が沢山牛にとまってた。
 牛は残念ながら手が無いので、尻尾を振りながら追っ払ってたが、みんな虻の痛がゆさを知っているので、牛に同情していた。(具体的に何かをしてあげた訳ではないが…)

 小学生の夏休み、母の故郷、福島県の磐城に行った。
 当時、母の姉、つまり伯母は町外れの田舎で雑貨屋をしていた。
 『何でも好きなお菓子取って食べていいよ…』、と言われて、狂喜した僕は五十円もする、かぶと虫型の容器に入ったチョコをゲットした。
 僕一人だったのであの欲深い妹達を気にする必要もなかった。(妹達がいたら僕は三十円であいつらは二十円だったろう…)
 しかし、面白いのは手に入れた瞬間、つまらなくなってしまった事である。
 中身は食べて、ケースは妹達への土産にした。
 妹思いの兄だ…。
 その近くに夏井川と云うのが流れていて、岩のゴロゴロした、同時に水量のある立派な川だ。冬には白鳥も飛来するらしい。
 ある日、一人でここに泳ぎに行った時に事件は起きた。
 虻の波状攻撃にさらされたのだ。
 潜り、顔をあげると刺され、又潜り、顔をあげると刺される。この繰り返しが延々と続いた。
 虻にはテリトリーがあるらしく、一匹潰しても、直ぐに新しい奴がそのテリトリーに入ってくる。
 鹿児島の川にはこんなに虻はいない。
 まるで鹿児島からの転校生が東北の子達にしつこく苛められているようだった。
 ついに、半ベソをかきながら伯母の家に帰った僕の顔はパンパンに腫れあがり、伯母にペニシリン軟膏を塗ってもらったが、そのまま熱を出して寝込んでしまった。
 
 今、夏になると我が家の工房の白壁の下には多くの虻の死骸がある。
 高速で壁に頭から激突した結果だ。
 あいつらは、白い色を識別出来ないようだ…。
 
 僕はこの白壁が僕の福島での被害を知っていて、仕返しをしてくれているようで好きだ。
 これこそが妖怪『ぬりかべ』君に違いない。

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