呼子

15代日記 | 2008年8月9日

75-1
 佐賀県の呼子に行った。
 『よぶこ』と読む。
 美しい入江の小さな港町の地名の由来は解らない。
 港に並ぶ旅館を見て、宿場につきものの色町を連想し、それで「呼ぶ子」かな…などと、勝手に考えてみた。
 
 昔から多くの漁師が移り住んで来たらしい。
 僕には瀬戸内から豊後水道、博多湾から長崎、天草、五島、壱岐、対馬が何故か一体に思えてならない。
 つまり『漁師』と云う名の塩飽の海賊と倭寇が繋がって見えるのだ……。
 税関も入官も海上保安庁も無かった時代の多国籍パイレーツ達の躍動を想像してみたら面白い。
 
 そのせいか、この町は『烏賊』が有名である。
 
 聞くところに拠ると、イカは人間の体温でも火傷してしまうらしく、良い漁師は釣れたイカを手で触れずに、生け簀に入れるそうだ。
 食べる寸前に初めて料理人が触れるのだ。
 
 原油高騰でイカ漁を休むなんてニュースもあったが、早稲田の先輩、太田氏が経営する『萬坊』(0955 82 4888)がついている。
 透き通ったイカをお刺身で頂いた。
 絶品!。
 
 さて呼子には『次世代リーダー養成塾』の講師として行ったのだが、この次世代のリーダーと云うネーミングがいかにも恐ろしげだ。
 このメンバーには、早めに挨拶をしておかないと将来マズいかも知れない…と云う警戒心を抱いてしまう。
 
 しかし、彼らは成績順に選ばれた、『ガリ勉君』達ではなく、生徒会役員ばかりの『人格君』達でもなかった。
 全国から集まった普通以上に素直で真面目な高校生の社会学習だと理解してくれたらいい。
 彼ら170人を二週間、共同生活をさせながら、社会人を講師に呼んで、共にディスカッションするのだ。
 ただし、社会人講師と言っても、タイのタクシン元首相やインドネシアのマハティール元首相、明石康氏等、半端じゃなく豪華だ。
 不肖、十五代沈寿官は、何故かその末端の末端に加えて頂いた。
 有り難い事です。 
 高校生を前にして、何を話せば良いのか…。
 居並ぶ一流講師に負けまいと、得意の薩摩焼きの話を一時間半延々としようかと思ったが、それは事務局にやんわりと断られた……。
 
 慌てて、日本のトップ企業の社長が出した本を買い求めたりしたが、所詮、付け焼き刃、生兵法は怪我の元と知った。
 そこで腹を据えて考えてみたのだが、『素直さ』や『真面目さ』は確かに大切な才能である。が、それを生かすのは、やはり『怒り』ではないかと思った。
 ベースに戦うハート、『怒り』が無いと、感謝も尊敬も労りも、気付きも絶望も本来の効果を持たないのではないだろうか…。
 つまり『激しい情』や『熱い感性が』様々な触媒によって姿を変え、それによって得た感情に、深みと自己増殖を与えるのではないか…、そしてそれは、学習で得るものではなく、自分で造り、仕立て上げていくものだろう。
 ましてや、青春期は社会の歪みや自己の矛盾と葛藤するものだ。それが無い人はやはり浅い。
 …なんて思いながら講演に突入した。
 結果は分からない。
 ただ彼らはとても優しく、好奇心に溢れた人々である。
 彼らの拍手と質問攻めを素直に喜びたい。
 窓越しに佐賀のやはりアホな蝉達の大声援を受けながら頑張った。
 
 近い将来彼らはどんな大人になるんだろう…。
 
 我が家のラグビーばかりで何も学習しない高校生の日焼けした黒い顔が浮かんだ。

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